無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 生田目総合病院は、自宅から歩いて十分ほど。由惟は緊張の面持ちで、初めてそこに足を踏み入れた。
 受付で手続きを教えてもらい、脳神経外科のある七階へ向かう。とりあえずナースステーションで手術の状況を確認しようと、中ににいた看護師を呼び止めた。

「お見舞いですか?」
「えぇっと……一時間ほど前に救急搬送されたくも膜下出血の患者さんの手術って、もう終わりましたか?」
「……ご家族の方ですか?」
「いえ……」

 首を振る由惟に、看護師は申し訳なさそうに頭を下げた。

「すみません。個人情報ですので、患者さんに関することはどんな情報でもご家族以外の方にはお話しできないんです……」

 言われてみれば当然だ。でもこのまま引き下がりたくはなかった。
 
「あ、あの。私、成澤真紘の親族のもので……彼が手術を終えたのかを知りたくて……」
「成澤先生のですか?」
「はい……」

 看護師が驚いたように目を見開く。由惟は咄嗟に目を逸らしたくなった。

 婚約者の身代わりという複雑な事情を話すつもりはないが、穂乃花の名を他人に騙るのは抵抗があった。
 本物の穂乃花を知っている人がいれば、身代わりがバレてしまう可能性があるので。それに、全く関わりのない人から穂乃花と認識されるのは、自分が自分でなくなるような気がして、なんだか嫌だった。

 訝しむような看護師の視線にひたすら耐えていると、彼女はようやく納得してくれたのか首肯した。

「成澤先生は今くだんの患者さんのオペ中で。よかったら向こうのデイルームで待っていてください。オペが終わったらお声がけしますね」
「ありがとうございます」

 よかった、なんとか切り抜けた。
 由惟はペコリとお辞儀をして、言われた通りデイルームへと向かった。
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