無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「紅葉、きれいですね。こんなに見頃になっていたなんて知らなかったです」
声を弾ませながら真紘に語りかける。
当然、笑顔で同意してくれるものだと思っていたけれど――
真紘はひどく冷めた目で由惟を見下ろしていた。
ほんの一分前までの甘やかな雰囲気は一瞬にして消え去っている。飛び回る羽虫でも見ているかのように、忌々しげな表情だ。
あまりの温度差に、由惟は息を呑んだ。
「うまく化けたものだな」
「…………ッ」
まさか、身代わりがバレたのだろうか?
身を固くしていると、繋いでいた手が乱暴に振り解かれた。
心臓が早鐘を鳴らしている。逃げた方がいいのかもしれない。でも足は縫い付けられたように地面から離れない。
茫然と立ちすくむ由惟を、真紘は冷たく睥睨した。
「周到に猫を被っているみたいだが、うすら寒いんだよ。さっさと本性を現したらどうだ?」
「本性なんて……」
全身から汗が噴き出してくる。
どうしよう。今日が初対面だとみどりは言っていたのに、一体どうしてバレてしまったんだろう。
「おまえがとんだ悪女だってことは、既に把握済みだ。そこら中の男から金を巻き上げて、ことごとく借金漬けにしてたんだろ?とぼけるなよ」
「……はい?」
由惟は思いがけず目を瞬かせた。なにせ真紘の言葉に心当たりがないので。
自慢じゃないが、由惟は生まれてこの方男の人と付き合った経験はない。お金をもらう以前の問題だ。
ということは、彼が言っているのは穂乃花のことなのだろうか?
大病院のお嬢様が、そこら中の男性から金品をせしめている?
(そんな話、聞いてないんだけど)
先程とは別の意味で、由惟は眩暈を覚えた。
生田目夫妻からは穂乃花の詳しい人となりを聞かされていなかっただけに、衝撃的な内容だ。夫妻は娘の悪事を知っているんだろうか。
いや、だがタチの悪い噂という可能性もある。むしろそうであってほしい。
噂の真偽を確かめる術がない以上、由惟は穂乃花として白を切り通すしかなかった。
声を弾ませながら真紘に語りかける。
当然、笑顔で同意してくれるものだと思っていたけれど――
真紘はひどく冷めた目で由惟を見下ろしていた。
ほんの一分前までの甘やかな雰囲気は一瞬にして消え去っている。飛び回る羽虫でも見ているかのように、忌々しげな表情だ。
あまりの温度差に、由惟は息を呑んだ。
「うまく化けたものだな」
「…………ッ」
まさか、身代わりがバレたのだろうか?
身を固くしていると、繋いでいた手が乱暴に振り解かれた。
心臓が早鐘を鳴らしている。逃げた方がいいのかもしれない。でも足は縫い付けられたように地面から離れない。
茫然と立ちすくむ由惟を、真紘は冷たく睥睨した。
「周到に猫を被っているみたいだが、うすら寒いんだよ。さっさと本性を現したらどうだ?」
「本性なんて……」
全身から汗が噴き出してくる。
どうしよう。今日が初対面だとみどりは言っていたのに、一体どうしてバレてしまったんだろう。
「おまえがとんだ悪女だってことは、既に把握済みだ。そこら中の男から金を巻き上げて、ことごとく借金漬けにしてたんだろ?とぼけるなよ」
「……はい?」
由惟は思いがけず目を瞬かせた。なにせ真紘の言葉に心当たりがないので。
自慢じゃないが、由惟は生まれてこの方男の人と付き合った経験はない。お金をもらう以前の問題だ。
ということは、彼が言っているのは穂乃花のことなのだろうか?
大病院のお嬢様が、そこら中の男性から金品をせしめている?
(そんな話、聞いてないんだけど)
先程とは別の意味で、由惟は眩暈を覚えた。
生田目夫妻からは穂乃花の詳しい人となりを聞かされていなかっただけに、衝撃的な内容だ。夫妻は娘の悪事を知っているんだろうか。
いや、だがタチの悪い噂という可能性もある。むしろそうであってほしい。
噂の真偽を確かめる術がない以上、由惟は穂乃花として白を切り通すしかなかった。