早河シリーズ第四幕【紫陽花】
『君が“付き人のなぎさちゃん”か』
口調を和らげた男がかすかに笑った。なぎさは目の前の長身の男を見上げる。数秒間、彼を見つめてなぎさは驚愕した。
「もしかして……一ノ瀬蓮……さんですか?」
『もしかしなくても一ノ瀬蓮さんですよ。あれ? 気付いてなかった?』
一ノ瀬蓮は端整な顔を綻《ほころ》ばせて笑った。
◆一ノ瀬 蓮、31歳。本名同じ
玲夏と同じ芸能プロダクション、〈エスポワール〉所属の人気俳優。
一般公募の有名オーディションで準グランプリに選ばれ、14歳で俳優デビュー。
23歳で主演した映画の演技が絶賛され、日本アカデミー賞主演男優を受賞。ドラマや映画の主演をこなす蓮は人気も実力も若手俳優のトップクラスだ。
蓮はこれから玲夏がクランクインするドラマの出演者のひとりで、玲夏の相手役。吉岡社長から教えられた蓮の情報は以上だ。
他の出演者やスタッフには細かな注意点が付け加えられているが、一ノ瀬蓮には特に注意や警戒は必要ないと吉岡は言っていた。
『ごめんねー。本当はそっちに挨拶に行くつもりだったんだけど厄介な奴に捕まっちゃって。なかなか離れてくれなくて参るよ』
厄介な奴とは先ほどの女のことだろうか?
……それにしても、何だろう、彼のこの軽いノリは。何だろう、この肩に回された手は。
(これでも私は一ノ瀬蓮のファンなんだからね! テレビでは硬派なイメージなのに、なんでこんなにチャラいのよ! 私の長年の一ノ瀬蓮のイメージが崩れていく……)
「あの、一ノ瀬さん?」
『玲夏のとこ行くんだろ? 連れて行ってあげるよ』
「メイクルームまでの道を教えていただければひとりで行けます」
『また迷っても知らないよ。“香道なぎさ”ちゃん?』
蓮がなぎさの耳元で彼女の“本名”を囁いた。
口調を和らげた男がかすかに笑った。なぎさは目の前の長身の男を見上げる。数秒間、彼を見つめてなぎさは驚愕した。
「もしかして……一ノ瀬蓮……さんですか?」
『もしかしなくても一ノ瀬蓮さんですよ。あれ? 気付いてなかった?』
一ノ瀬蓮は端整な顔を綻《ほころ》ばせて笑った。
◆一ノ瀬 蓮、31歳。本名同じ
玲夏と同じ芸能プロダクション、〈エスポワール〉所属の人気俳優。
一般公募の有名オーディションで準グランプリに選ばれ、14歳で俳優デビュー。
23歳で主演した映画の演技が絶賛され、日本アカデミー賞主演男優を受賞。ドラマや映画の主演をこなす蓮は人気も実力も若手俳優のトップクラスだ。
蓮はこれから玲夏がクランクインするドラマの出演者のひとりで、玲夏の相手役。吉岡社長から教えられた蓮の情報は以上だ。
他の出演者やスタッフには細かな注意点が付け加えられているが、一ノ瀬蓮には特に注意や警戒は必要ないと吉岡は言っていた。
『ごめんねー。本当はそっちに挨拶に行くつもりだったんだけど厄介な奴に捕まっちゃって。なかなか離れてくれなくて参るよ』
厄介な奴とは先ほどの女のことだろうか?
……それにしても、何だろう、彼のこの軽いノリは。何だろう、この肩に回された手は。
(これでも私は一ノ瀬蓮のファンなんだからね! テレビでは硬派なイメージなのに、なんでこんなにチャラいのよ! 私の長年の一ノ瀬蓮のイメージが崩れていく……)
「あの、一ノ瀬さん?」
『玲夏のとこ行くんだろ? 連れて行ってあげるよ』
「メイクルームまでの道を教えていただければひとりで行けます」
『また迷っても知らないよ。“香道なぎさ”ちゃん?』
蓮がなぎさの耳元で彼女の“本名”を囁いた。