早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
3年前に別れている男と女は3年振りのキスを交わす。あかりの背伸びが保てなくなると、渡辺は彼女を壁に押し付けた。
さらにキスを迫る渡辺を見てあかりが吹き出した。
「ふふっ。発情期の男の子みたい」
『静かにしてろ』
優しく囁かれた命令の言葉に従ってあかりは口を閉ざす。ついばむように、とろけるように、重なり合った唇と絡み合う舌。
どちらのものかわからない唾液を二人同時に呑み込んだ。
何度目かの息継ぎで唇を離したタイミングであかりの小さな手が渡辺の体を押しやった。
「もう……行くね。人を待たせてるの」
『……ああ』
するりと腕から抜け出たあかりの背中に渡辺は問わずにはいられなかった。
『お前、今幸せか?』
「……幸せだよ」
今度はあかりは振り向かない。もう一度顔を見てしまえばここから動けなくなる。
「さようなら」
一言呟いてあかりは階段を降りた。工学部の研究棟を出た彼女は大学前に待機している車に乗った。
後部座席にいる寺沢莉央の隣に座る。
「スネークの姿は見当たりませんでした」
「そう。さっき、大学に上野警部が入って行ったわ。あちらもスネークの存在に気付いたようね」
あかりの横顔を見て莉央が柔らかく微笑んだ。
「会いたい人には会えたのかな?」
「クイーンにはなんでもわかっちゃうんですね」
苦笑するあかりは無意識に唇に触れた。この唇がさっきまであの人の唇と重なっていた。
今でもあの人が好きだと、心が叫んでいる。
「会えない方がよかった?」
「いいえ。これでようやく……サヨナラできます。本当にこれで最後の……」
(亮くんごめんね。私はあなたには一生言えない秘密がある)
この秘密をあなたにだけは知られたくないから。もうあなたには会わない。……二度と。
さらにキスを迫る渡辺を見てあかりが吹き出した。
「ふふっ。発情期の男の子みたい」
『静かにしてろ』
優しく囁かれた命令の言葉に従ってあかりは口を閉ざす。ついばむように、とろけるように、重なり合った唇と絡み合う舌。
どちらのものかわからない唾液を二人同時に呑み込んだ。
何度目かの息継ぎで唇を離したタイミングであかりの小さな手が渡辺の体を押しやった。
「もう……行くね。人を待たせてるの」
『……ああ』
するりと腕から抜け出たあかりの背中に渡辺は問わずにはいられなかった。
『お前、今幸せか?』
「……幸せだよ」
今度はあかりは振り向かない。もう一度顔を見てしまえばここから動けなくなる。
「さようなら」
一言呟いてあかりは階段を降りた。工学部の研究棟を出た彼女は大学前に待機している車に乗った。
後部座席にいる寺沢莉央の隣に座る。
「スネークの姿は見当たりませんでした」
「そう。さっき、大学に上野警部が入って行ったわ。あちらもスネークの存在に気付いたようね」
あかりの横顔を見て莉央が柔らかく微笑んだ。
「会いたい人には会えたのかな?」
「クイーンにはなんでもわかっちゃうんですね」
苦笑するあかりは無意識に唇に触れた。この唇がさっきまであの人の唇と重なっていた。
今でもあの人が好きだと、心が叫んでいる。
「会えない方がよかった?」
「いいえ。これでようやく……サヨナラできます。本当にこれで最後の……」
(亮くんごめんね。私はあなたには一生言えない秘密がある)
この秘密をあなたにだけは知られたくないから。もうあなたには会わない。……二度と。