彼の溺愛の波に乗せられて
「ごめんな」

「ちがっ。私わかんなくて!」

「ちょっと寒いけど海に寄ってもいいか?」

雅と出会った海に行きたい。
波の音を聞きたい。

「え? あ、うん」

すっかり雅は大人しくなってしまった。

そして冬の姿に変わった海へと向かい、これまで通り砂浜へ車ごと入って行った。

外に出たいけどさすがに寒いか…

「天寿、外でよ」

すると雅が先に声をあげた。

「そうだな」

俺はフッと笑って車に積んでいたブランケットを出す。

そして前みたいに雅をボンネットの上に持ち上げて乗せた。

俺も乗って雅を後ろから囲うように抱っこすると上からブランケットですっぽりと覆った。

「ふふふ。あったかい」

そう言ってようやく笑った雅の息は白くなっていた。

「雅…聞いてくれるか?」

雅はコクっと頷いた。

「俺、我慢してたんだ」

雅は肩に力を入れる。
俺はそっと雅の手を覆うように上から握った。
小さくて華奢な手だ。
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