彼の溺愛の波に乗せられて
ここはあんまり範囲は広くないけど、その割にいい波が来る。
少し荒めだが、私はずっとここで乗ってきたからこれが一番好き。
するとほぼ誰もいなかった所に一台の車が入ってきた。
あ!
あの車!
彼だ!
そして間も無く彼もボードを抱えて海に出てきて、さっそく波に乗り始めた。
相変わらず見事だ。
ありゃプロだろ。
そして波を待つ間私はそーっと近づいてみる。
目があったので声をかけた。
「あの、先日は牽引してもらってありがとうございました」
すると彼は1ミリも表情を変えずに口を開いた。
「誰?」
ズコーんとそのまま海に落ちてしまいたくなる。
忘れられていた。
「覚えてないならいーや。まずお礼だけ言いたかったんで。じゃ」
つい本音が口から出て、私はそのままその場を離れた。