一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
「……芽衣に家事をしてもらっても、たぶん俺、無意識のうちにやり直してしまうような気がする……。そしたら、芽衣は気分が悪いだろう? 俺にとってはもう身体に染み付いていることだから、息を吸うと同じようなことなんだ。だからやり方が悪いとか、そんな風に思っている訳ではないんだが」

 そこまで聞いて、ようやく芽衣は、彼がなにを心配しているのか理解する。洗濯にしても掃除にしても、芽衣がやった後から、晃輝が手を出してしまいそうだということか。

 それでは芽衣が不快に思うだろうと彼は心配しているのだ。

 じゃあ、その手出しをやめてくれればいいのに、とは思わなかった。

 自衛隊の教育課程の厳しさは、うみかぜでもたびたび耳にする。ほんの少し、シーツの角が曲がっているだけで、同室の隊員全員が連帯責任で厳しい罰を受けるという。

 教育課程を終えても船艦に乗れば、完全に共同生活だ。徹底的に管理された生活を送っている。規律を乱すことは厳禁で、それが国防という大きな使命を負った組織には必要不可欠なのだろう。

 プライベートは切り替えて、少しくらい気を抜いてもいいじゃないかというような簡単な話ではないのだろう。

「俺が家事をするからといって、芽衣は気にせず好きなように過ごしてくれていい。部屋を散らかすのも汚すのも、どれだけ洗濯物を出してもいい。芽衣は仕事で疲れているんだから、うちではリラックスして過ごしてほしい」

 本当に申し訳なさそうにする晃輝が、なんだかおかしくなってきて芽衣はくすりと笑ってしまう。小さな子供じゃないんだから、芽衣だって自分で自分のことくらいはできるのに。

 芽衣が心配しなのは、自分の気持ちではなく彼のことだった。

「晃輝さんは、それでリラックスできますか? 陸にいる時くらいはゆっくりしてほしいって私は思いますけど」

「それが一番、俺にとってはありがたい。もちろんキッチンは芽衣はこだわりがあるだろうから、おしえてくれれば言われた通りに片付けるよ」

「じゃあ、お願いします」

「ありがとう」

 心底安心したように礼をいう彼がおかしくて、芽衣はくすくすと笑ってしまう。

「なんか変です。家事を全部してもらうのは私なんだから、私がお礼を言うべきなのに」

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