一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
 芽衣の口から、少し間の抜けた声が出る。予想と大きく外れていたからだ。彼の様子から、もっと深刻なことを想像していた。

「正確にいうと、料理以外かな。できれば陸にいる時は、芽衣の料理を食べたいから。もちろんそれは芽衣がやりたい時だけでいいんだけど、とにかく掃除とか洗濯とか料理以外の家事はすべて俺にやらせてほしい」

「全部って……そういうわけには」

 戸惑いながら芽衣は答える。

 すべてをやってもらえれば、はっきり言って芽衣は楽だ。料理以外の家事は特に好きな訳ではない。仕事が忙しいと疲れて疎かになりがちで洗濯なんかは数日分まとめてやることもあるくらいだ。

 でもそれは晃輝だって同じはず。

 仕事で疲れているのに、ふたりの分の家事をやってもらうわけにはいかない。

「私もやります。晃輝さんだってお仕事で疲れているんだから。全部やってもらうなんて申し訳ないです」

 芽衣の言葉に、晃輝が首を横に振った。

「そうじゃない、芽衣。申し訳ないと思うのは俺の方だ。これは俺からのお願いなんだから」

「晃輝さんからのお願い……」

 なんだか頭がこんがらがりそうだ。

 彼はすべての家事をやりたがっている。そしてやらせてもらうことを申し訳ないと思ってる?

「自衛官は身の回りのことはすべて自分でできるように徹底的に叩き込まれている。誰かを守るという職務に就いている者が自分のこともできないようでは話にならないからね」

 そう言われてみれば、確かにこの部屋は完璧に整えられている。

 思い返してみると寝室のベッドのシーツもホテルのようにピッタリとしてしわひとつなかった。

 シャワーを使わせてもらった時に借りたタオルも引き出しの中で折り目がきちんと揃えられて収納されていた。

 この家は、芽衣の部屋とは比べ物にならないくらいすべてが行き届いている。

 晃輝が、暗い表情でため息をついた。

< 164 / 182 >

この作品をシェア

pagetop