一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
 実際にその船に乗る乗組員に対して配慮に欠ける言葉だが、気遣っている余裕がなかった。

 両親が亡くなったあの時のことが蘇る。あの日は海は荒れていなかった。
 
 だからなぜ両親の船が沈んだのか、結局わからないままだったのだ。穏やかな海に出航した両親でさえ、無事に帰ってこなかったのに、荒れた海に出航するなんて正気の沙汰とは思えない。

「海上自衛隊の船艦は、どれも台風くらいでは沈まないよ。大丈夫」

 芽衣を安心させるように晃輝が力強く言い切った。

「そう……なんですね。不謹慎なことを言って、すみません」

「いや、大丈夫。はじめて聞く人は皆、驚くよ。だからこの時期は、予定を立てるとしても天気予報と相談なんだ。旅行なんかの予定は立てにくい」

「そうなりますよね……」

 納得したように、不自然ではないように、芽衣は意識して受け答えする。けれど心の中は動揺したままだった。

 出航した両親が連絡を絶ってから、海上保安庁や漁師仲間が懸命に捜索したが、結局両親は見つからなかった。その時から芽衣にとって海は、大切な人の命を飲み込む存在となったのだ……。

「大丈夫? 少し疲れた?」

 晃輝が心配そうに芽衣を覗き込む。すぐ近くにある彼の視線に、過去を思い出していた芽衣は、現実に引き戻された。

 いつの間にか、芽衣の部屋の前まで来ていた。

「大丈夫です。確かに、いろいろなことがあって、ちょっとキャパオーバーって感じですけど」

 心を落ち着けながら、芽衣は答える。少し混乱してしまっている。もうさっきまでのふわふわとした気持ちではなくなっていた。

 海上自衛隊の仕事を理解して彼と付き合うことに決めた。

 スケジュールの変更や長期間会えないことに関しては納得しているけれど、それよりももっと自分には、考えなくてはいけないことがあったような。

 彼がこの街にいなくて会えない時は、つまりは船に乗っているという意味で……。

「送ってくれて、ありがとうございました」

 言いながら彼を見て、芽衣の鼓動は飛び跳ねる。

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