一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
 晃輝が、いつものラインを越えていることに気がついたからだ。
 身を屈めて芽衣の耳に寄せた彼の唇が囁いた。

「芽衣」

 芽衣の身体の奥のなにかが、ずくんと大きく音を立てた。

「ドアを開けてくれる? この間、できなかったことをしたい」

 甘い甘い問いかけに、芽衣はさっきまで自分がなにを不安に思っていたのかわからなくなってしまう。頬が熱くなって頸がチリチリと痺れるのを感じながから、ただこくんと頷いた。

 ——静かにドアが閉まると同時に、芽衣は優しく引き寄せられる。薄暗くて狭い玄関で、彼の腕の中に閉じ込められた。

「芽衣、好きだよ」

 耳元で熱い吐息が囁いた。

 再び、身体の中心がぐらりと揺れて、そこから熱が広がってゆく。

 店では皆、芽衣のことを名前で呼ぶ。だからそう呼ばれてもなにも特別なことではないはずなのに、彼の声で呼ばれるだけでまったく違って聞こえるのだから不思議だった。

「ずっとこう呼びたかった。他の隊員たちが君の名を呼ぶのが気に食わないなかったよ」

「あ、あれは、ただ親しみを込めてそう呼んでくださっているだけで。特別な意味なんてないです」

 普段冷静で穏やかな彼が口にする少し身勝手な独占欲に、芽衣の背中を甘いぞくぞくが駆け抜ける。頭が沸騰してしまいそうだ。

「それでもだ。芽衣、こっちを向いて」

 その言葉に芽衣はこくりと喉を鳴らす。上を向いたその先に、なにが待っているのか、経験のない芽衣でもわかる。

 恐る恐る顔を上げると、至近距離にある熱い眼差しが自分だけを見つめていた。

 大きな手が顎に添えられ、親指が唇を優しく辿る。

「キスしていい?」

 言葉にして確認するのが、彼らしいと芽衣は思う。彼は、特別な関係になっているからといって、芽衣の望まないことはしないのだ。

 けれどそれに答えるのは、たまらなく恥ずかしいことのように思えた。

 彼のシャツをギュッと握り締めて、恐る恐る頷く。それが自分にできる精一杯だ。

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