攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜
ううん。落ち込んでる場合じゃないわ。
早く本を完成させて、孤児院を回って絶対にエリーゼを見つけるんだから!
気合いを入れ直した私は、グッと拳を作ってその場から立ち去った。
***
「よし。インクたくさん買えたぞ!」
街に出て数時間。
お目当てのお店を発見した私は、インクを大量に買って帰路についていた。
フェリシーとしてこの国に住んではいたけれど、こんな文具系のお店には行ったことがなかった。
異世界のお店に興奮して、ついつい長居してしまった。
他にもいろいろ買いたかったけど、お金は少しでも残しておかないとね。
家を出られても、仕事を見つけるまではどうしてもお金が必要になるし!
この辺にも孤児院がないかと周りをチラチラ見ながら歩を進める。
日が落ち始めた街には、仕事帰りの疲れた様子の男性や買い出しに走る女性の姿が多い。
そんな人混みの中で、みんなの視線を集めている人物がいた。
「わぁ……すっっっごいイケメン……!」
少し離れた場所からでも見つけられるほどの長身に、艶のある黒髪。
身なりからして、かなりの高位貴族だと思われる。
美形3兄弟に引けをとらないほどの綺麗な顔をした男性に、街の若い女性たちはきゃあきゃあと黄色い声を上げている。
すごい!!
メインキャラじゃないのに、あんなにイケメンな人がいるなんて!