攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜
俺の顔をこんなブサイクに描きやがって! と怒られたらどうしよう。
そんな不安に襲われるけど、今から新しい料理を作る時間なんてない。
えーーい! 仕方ない!
もう、このクッキー持っていくしかない!!
「ビト!」
「はい」
名前を呼ぶと、ビトはすぐ私の前にやってきた。
ついさっきまで肩を震わせていたのに、今はしれっと真顔に戻っている。
……絶対にクッキーを見ないようにしているけど。
「ディラン様にこれを届けたいの。お部屋まで案内してくれる?」
「かしこまりました」
「キッチンを貸してくれてありがとう」
コックたちにお礼を言い、ビトと一緒に廊下に出た。
私の手には、白いお皿の上に並んだ3兄弟の顔クッキー3枚がある。
描いてるときはただただディランをイメージして怒ってる顔にしちゃったけど、もっとイケメン風に描けばよかったかな?
よく怒る人って、自分が常に怒った顔してる自覚ないっていうし……。
そんな後悔をしてももう遅い。
このイベントは、もうこのクッキーで勝負するしかないのだ。
モヤモヤ考え事をしている間に、ディランの部屋に着いたらしい。
前を歩いて案内してくれていたビトが、「こちらです」と言うなり私の後ろに戻った。
着いちゃった……!!
もう逃げられない!!