地雷カプブルー

 俺を拒絶するかのように敬語で締めくくられた叫びが、雨つぶに吸い込まれ消えた。

 彼はもう、俺と対話をする気がないらしい。

 壁を作るように俺に背を向け、うつむいている。


 輝星の勘違いを正したい。

 奏多のことなんてなんとも思っていないとわかって欲しい。

 それは奏多だって同じだ。

 今日の昼休みのテニス練習で、俺を教室に帰らせて輝星と二人きりになろうとした奏多のことだ。

 彼が気になっているのは俺じゃない。

 輝星を気に入ったことは間違いない。
 

 それが友情なのか愛情なのかまでは判断できなかったが、俺を敵視する姿は恋愛で生まれる嫉妬感情だと推測する。

 俺も同じような態度を、小学校の時に取っていたから。


 これ以上輝星と話しても、ハートを傷つけあってしまうだけかもしれないな。

 時間を置くことで、うまくいくこともあると聞く。

 
 「もう教室に戻ろう」


 俺はベンチから立ち上がった。


 「まだ雨が強いから、輝星は流瑠さんの傘を使って」


 立てかけてあった真っ赤な折り畳み傘を、うつむく輝星に差し出す。

 輝星は受け取る気配がない。

 手は太ももの上に置かれたままで、動く気配がない。

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