地雷カプブルー

 「自分のこと……大嫌いなんだ……でもね……」

 「……」

 「霞くんを大好きな自分だけは……大好きになりたい……」

 「え?」

 「やっぱり自分の気持ちに嘘はつけない。つきたくない。だってほんとはイヤだったんだもん。霞くんと奏多くんが笑い合ってるのを見てるのは」

 「……」

 「小6までの霞くんは僕にしか心を開いてくれてなかったのにって、学校に来るたびに嫉妬みたいな敗北感で苦しくなっちゃって……それがしんどくてたまらなくて……この醜い感情を流瑠ちゃんにも話せなくて……」

 「……」

 「霞くんに避けられているのがつらすぎて、霞くんと奏多くんは僕にとっての推しカプだって思い込んでみたけど、そんなんじゃ嫉妬心が消えてくれなかったんだ。ほんと嫌になる。こんな醜い感情捨てたいよ。霞くんのこと嫌いになりたいよ。二度と会いたくないって思うくらい大嫌いになりたい。でも大好きでたまらない。幼稚園で出会ったころよりも、小学校で一緒にテニスをやってた頃よりも、今が一番霞くんのことが大好きなんだ……毎日毎日、好きっていう感情が募っていっちゃうんだ……」


 「助けてよ……霞くん……」と、涙声を震わせた輝星が、俺に絡めていた腕をほどいた。

 「ごめん……今の忘れて……」

 うなだれながら、ベンチに腰を下ろしてうつむいている。


 「霞くんに風邪をひかせたのが自分だと思うと、余計に自分のことを嫌いになっちゃうから……使って、流瑠ちゃんの傘。僕のことは気にしないでいいから……」


 今度はベンチに座る輝星が俺に傘を手渡してきた。

 輝星が視線を絡めようとしてくれない。

 そのことが無性に悲しくて「傘はいらない、輝星に使って欲しい」と静かに断りをこぼす。
< 119 / 130 >

この作品をシェア

pagetop