地雷カプブルー


 泣きそうな顔でベンチに座る輝星を、もう一度瞳に映す。

 うつむいてはいるものの、頬に涙の痕がはっきりと残っているのがわかる。


 輝星にこんな顔をさせたいんじゃない。

 本当はずっとずっと笑っていて欲しい。

 輝星は人を幸せにするエンジェルスマイルの持ち主だから。

 キラキラな笑顔を引き出せるのが、唯一、俺だけだったらいいのに……

 輝星の隣で、輝星の笑顔を独り占めできたらいいのに……


 輝星のことが自分よりも大事だからこそ、輝星を自分のものにしてはダメだと思えてくる。

 輝星が使ってと伝えたくて、真っ赤な折り畳み傘を輝星の隣に置いた時だった。

 ふいに流瑠さんの笑顔が浮かんだのは。


 『私、カステラが最推しなの!』

 『その時思ったんだ。お互いがお互いのことを大事に思っている、素敵なカプだなって』

 『てらっちを守ってあげてね、カスミ王子!』
 

 ポニーテールを揺らす流瑠さんが再び脳内に浮かび、ハッとする。

 無性に、おびえて委縮している自分のメンタルを殴りたくなった。

 しっかりしろと怒気を飛ばし、拳を食い込ませたくなった。


 何を俺は恐れていたんだろう。

 流瑠さんの言う通りだ。

 これから先、俺が全力で輝星を守ればいい。

 輝星が俺のために自己犠牲を払わないよう俺自身が気をつけ、輝星をとことん愛すればいいだけのことだったんだ。
 
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