名前

「その男、信用できるんか」
「信用できるよ。私が貯めた分じゃ足りなかったから、久住さんの名義で銀行から融資を受けてくれたし」
「どこの銀行じゃ。担当者は? 事業計画書は作ったんか」
「そんな色々聞かれても」
「ケチな銀行が開業前の個人に金を貸してくれるわけないじゃろ。不動産屋との契約は確認したんか。変な書類にサインを書かされたりは?」
「なにそれ、私が騙されてるって言いたいの?」

 問いかけに志摩はうなずきもしなかった。

「電話しろ、その男に」

 低い声で命令された。反論を許さぬ強い視線が私に向けられていた。
 仕方なくスマホを取り電話をかける。すぐに繋がり久住さんの声が聞こえてきた。

『桜子ちゃん? どうしたの?』
「あの、急にすみません。融資を受けた銀行と担当者の名前を教えてもらいたくて」
『なんでそんなこと聞くの?』
「ええと、きちんと話が進んでるのか不安になって」

 ためらいがちに言うと、電話の向こうで久住さんが笑った。


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