名前
 

『なになに急に。誰かに入れ知恵でもされちゃった?』
「入れ知恵って……」
『まいったなぁ。開店資金だけじゃなく、闇金でお金を借りさせて、風俗に落として。まだまだ巻き上げるつもりだったのに』

 自分の耳を疑う。この人はなにを言っているんだろう。

「もしかして、騙したんですか?」

 冷静になろうと努めているのに、動揺で声が震える。

『桜子ちゃん。ヤクザの娘が堅気の商売をできるって本気で思ってたの?』
「……なんで私がヤクザの娘って」
『調べればすぐにわかるよ。身内にヤクザがいるせいで、銀行からの融資どころか普通のローンも組めない。不動産屋だって相手にしてくれない。君みたいな底辺がまっとうに生きようとしたのが間違いだったんだよ』

 生まれてからずっと、ヤクザの娘という偏見が付きまとった。それが嫌で地元を離れ、誰も知らない場所で必死に頑張ってきたのに。

「お、お金、返してください」
『残念だけどもう使っちゃった』
「そんな」
『組長のお父さんに告げ口する?  それでもいいよ。ヤクザに脅されたって警察に届けるから』


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