戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 シルファが作業していたのは、小型の保冷庫。

 魔力は滞留し過ぎると熱を発する。保冷庫は魔力の滞留との相性が最悪な上に、普及率も高いため、メンテナンスの依頼が多い魔導具の一つだ。

 けれど、今シルファが魔力を吸い取った保冷庫は汚れも目立たず光沢もある。せいぜい購入してから二年、いや一年程度の代物かもしれない。


(あまり考えたくはないけれど、不良品……だったのかしら)


 人の手で作るものなので、いくら品質管理室が出荷前に最終チェックをしているとはいえ、まれにこうして回路に問題があるものや、魔力の巡りが良過ぎて劣化が早いものが生まれてしまう。

 シルファはさして疑問を抱かなかったが、ルーカスはどこかスッキリしない顔をして保冷庫を睨みつけている。


「エリオット、少し気になる。調べてくれるか」

「かしこまりました」


 ルーカスは保冷庫を手に取り、まじまじと観察した後、エリオットに簡潔に指示を出した。

 エリオットは保冷庫を軽々と抱えて、奥の書庫へと入っていってしまった。


「ルーカス様、何かおかしなところがございましたか?」


 シルファには気づけなかったが、あの保冷庫には何か欠陥があったのだろうか。

 そう思って尋ねると、ルーカスは頭をガジガジ掻いてからシルファのデスクの側面にフックで吊るされている管理簿を手に取り開いた。


「シルファがここに来てから、メンテナンス依頼が徐々に増えている気がする」

「え?」


 驚いて管理簿を覗き込むと、日によってムラはあるが、確かに平均値を算出すると最近の方が依頼数は多い。





< 55 / 154 >

この作品をシェア

pagetop