戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 しばらく街を散策していたが、少しお腹が空いたので、屋台で肉串を買って目に留まったベンチに腰掛けた。

 肉串には、牛肉とピーマンが交互に刺さっている。

 ピーマンを見ると、ルーカスのことを思い出して自然と口元が弛んでしまう。
 ピーマンだけを皿の隅に避けてエリオットに怒られる姿は本当に子供のようだ。


(今度は細かく刻んで挽肉と一緒に捏ねてみようかしら)


 なんて考えながら肉串に齧り付く。ジュワッと肉汁が口の中いっぱいに広がって多幸感に包まれる。ピーマンの程よい苦味が味を引き締めてくれてなんともたまらない。

 シルファはうっとりしながら肉串を堪能した。

 ボリュームたっぷりの肉串でお腹が満たされたので、次の目的地へと向かう。街で人気の菓子店だ。

 ルーカスは仕事柄頭を使い続けているため、よく甘味を口にしている。疲れた脳には糖分だ。今日のお土産にと、クッキーとフィナンシェを選んで包んでもらう。もちろんエリオットの分もだ。クッキーに合いそうな紅茶の茶葉も購入した。

 美味しそうにクッキーを頬張るルーカスを想像すると、またしても笑みが溢れる。
 そして、はたと気がついた。


(私ったら、魔塔を出てからずっとルーカス様のことばかり考えているわ)


 シルファを一喜一憂させ、穏やかな気持ちにさせる人。

 いつの間にそれほどまでにシルファの心の奥深くまで入り込んでいたのだろう。


(なんだか、無性にルーカス様に会いたい)


 今から戻ればちょうどおやつどきに間に合う。エリオットはもう今日のおやつを用意してしまっただろうか。
 まだゆっくり街を散策する時間は残っているが、シルファは踵を返して最初に訪れた本屋に向かった。





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