青空
「テツオ君、聞こえるかい。」

北村の問いに、テツオは小さ頷きで応えた。

その様子を、注射器に薬剤を注入しながら、横目で尾上が見つめている。


「昨日打った薬品が、黒い斑点を抑える効果があることが分かったんだ。方向性が分かったんだ。」

テツオは苦しそうに声を発して応える。


「今日はもう少し多い量を打つけど、きっと効果があるはずだ。」

そう優しく話しかける北村の後姿を、尾上はじっと見詰めていた。


確かにこの薬剤は効果があるかもしれない。

打たなければ、確実にその命の炎は消えてしまうかもしれない。
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