眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「ははっ、俺の顔に傷をつけられるのはあなたくらいですよヴェルデ」

 ヴェルデを見ながらクローは嬉しそうに笑う。

「おい、こいつと知り合いなのか」

 フェインがヴェルデに聞くと、ローラもヴェルデをそっと見る。

「こいつも本当は俺と同じ師匠の弟子だった。幼い頃に師匠に追放されたけどな」

 ヴェルデの言葉にクローは冷ややかな瞳を向ける。

「追放?違います、師匠は俺の才能を見込んで世界へ羽ばたかせてくれただけです。可愛い子には旅をさせろと言うでしょう」

 うっとりとした顔でクローは言うが、ヴェルデは大きく首を振った。

「馬鹿言え、お前が関与してはいけない魔術に手を出そうとしたから……」
「おい、お前たちがどういう仲なのかは今はどうでもいい。さっさとあの女を始末してくれ」

 ヴェルデの言葉を遮って、イヴの兄の一人がクローにそう言うと、クローはふむ、と顎に手を添えてからにっこりと微笑んだ。

「そうでした、あなたたちの願いはローラ姫を殺すことでしたね。ローラ姫を殺せばヴェルデに苦痛を味合わせることができる。俺の望みも叶うわけです」
「お前、どうしてそんなことをする必要があるんだ。追放されて逆恨みか?お前が追放されたことは俺は関係ないだろう」

 ヴェルデがローラを庇いながらそう言うと、クローは色のない瞳でヴェルデを見つめる。

「俺があの時やっていることをあなたが師匠に言わなければ、今の俺はいないんですよ。俺と師匠を引き裂いたのはあなたですヴェルデ。しかも俺がいなくなってから師匠を独り占めして……許せませんよ。さて、始めましょうか」

 そう言ってクローが薄ら笑いを浮かべると、イヴの兄たちが突然イヴの両手を掴み地面に押さえつけた。
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