眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 ヴェルデの声にローラは立ち止まり、ヴェルデを見た。その顔は少し悲しげで、でも何か吹っ切れたような清々しい表情だった。

(ごめんなさい、ヴェルデ様。ヴェルデ様を悲しませてしまうことはしたくなかった。でも、もうこれしか……)

「これしか方法がないんです。もう、私のせいで誰かが悲しむのは見たくありません。……ヴェルデ様、こんな私に幸せなひとときをくださってありがとうございました。あなたと一緒にいられて、本当に幸せでした。ヴェルデ様のこと、愛してます」

 ふわっと微笑むローラの顔は清らかであまりにも美しく、ヴェルデは息を呑む。近くにいたフェインも、ただただローラを見つめることしかできなかった。

 そのままローラがまっすぐにエルヴィンを見て歩き出そうとしたその時。

「……めだ、だめ、だ」

 エルヴィンの口が勝手に動く。エルヴィンの剣を持つ手がカタカタと震え、表情は苦しそうに歪んでいる。

「な、にを、貴、様」
「だめ、だ、ローラは、お前に、ころさ、せ、ない」

 ドクン!とイヴの心臓が大きく動き、エルヴィンの手から力が抜けて剣が落下する。そのままガクン、とエルヴィンは膝から崩れ落ちて地面に倒れ込んだ。

 それと同時に、イヴの体から黒いモヤが近くへ弾け飛ぶ。

「な!!まさか、そんな!」

 クローが慌てたようにイヴの体と黒いモヤを交互に見た。

「う……っ」

 イヴの体が起き上がり、そこにはエルヴィンではなくイヴがいた。
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