眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「師匠、何を……!」
「お前は禁忌を犯した。その罪はきちんと償わなければいけない。そして、お前はもう二度と魔法を使うことはできない」

 クレイの言葉に、クローは両目を大きく見開いた。

「師匠……どうして!師匠!やだ!俺から魔法を奪わないで!師匠!」

 クローが涙を浮かべて懇願するが、クレイは感情の籠らない瞳でクローを見つめている。そして、クローの額に浮かび上がった魔法陣が黄金に輝くと、クローの体から光が四方八方へ飛び散った。

「あ、ああ、俺の、魔力が……」

 クローは呆然としながら宙を見つめている。そんなクローを、クレイは魔法で拘束した。

「……!イヴ!」

始終を見届けていたローラはハッと我にかえり、イヴの元へ駆け寄る。イヴは体を起こしているがまだ立ち上がれる様子ではない。それでも、イヴはローラを見て微笑んだ。

「何とか、大丈夫だ」
「よかった……」

 ローラが安堵の表情を浮かべると、ヴェルデとフェインもイヴとローラのそばへ駆け寄った。

「怪我を治そう」

 ヴェルデがそう言うと、イヴの首元が一瞬輝き、剣でつけられた切り傷が消えた。

「それにしてもよく自力でエルヴィンを追い出したな」

 フェインが感心したように言うと、イヴは苦笑した。

「自分でもよくわかってないんだ。ただただ無我夢中で、ローラ嬢を助けなければと思ったらああなってた」

 フッと微笑むイヴを見て、ローラは涙を浮かべる。

「ありがとう、イヴ。あなたのおかげよ」
「そんなことない。ローラこそ、俺を助けようとしてくれただろ」

「どうして……どうしてだ……エルヴィン殿下がイヴの体から抜けなければこんなことには……」

 ぶつぶつとクローが一人で呟いている。そんなクローへクレイは冷ややかな視線を向けた。

「体となる本体の同意も得ないまま生きてる人間に憑依させれば、本体の魂がそれを拒絶する。拒絶が強ければ強いほど弾き飛ばされるのは当たり前のことだ。そんなこともわからないまま禁忌に手を出したのか、愚か者」

 クレイの怒りに満ちた言葉に、クローはいつの間にか涙を流し、嗚咽を漏らす。

「そういえば師匠、よくここがわかりましたね」

 ヴェルデの言葉に、クレイは眉を下げて微笑んだ。
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