海よりも深くて波よりも透明
~夏葉~

ある10月の平日。



都内で用事のあった俺は、授業終わりの穂風と合流するため、穂風の大学に来ていた。



大学の前で車を止めてしばらく待っていると、何人かの学生にジロジロ見られる。



怪しい者じゃないっす…。



学校に通報される前に早く穂風来てくれ…。



と思っていたら、しばらくして穂風が校舎の方から現れた。



「夏葉~、おまたせ!」



俺に手を振る穂風。



俺も穂風に軽く手を振り返す。



と同時に、穂風の隣に見覚えのある男がいることに気が付く…。



この前も穂風と一緒だった男だ。



名前は確か、野本だったか。



俺は普通に面白くない。



「野本くんのバイト先、帰り道だからついでに送っていってあげてくれない?」



なんで俺が…。



だけど、穂風の純粋な瞳に負け、送ってやることに。



「車かっけえっすね! いつから自分の車持ってるんスか? 自分の車持つの憧れてて!」



野本、悪いやつではなさそうだ…。



面白くはねえけど。



それから後部座席の野本からの質問をしばらく受け続け、ようやく野本のバイト先のピザ屋に着いた。



「まじありがとうございました! 今度食べに来てください!」



爽やかな野本に別れを告げ、ようやく俺は穂風と2人の時間。



「野本くんピザの宅配とかもやってるんだってー」

「へえ…」

「なに? 面白くない?」



穂風がにやにやしながら聞いてくる。



「楽しいわけはねえだろ」

「アハハ! あたしの大学の唯一の友達だから大目に見てよ」



気に入らね~…。



なんでよりによって大学で唯一の友達が男なんだよ。



女でいいだろ!



「そんないやだったら今度野本くんの彼女とダブルデートでもする?」

「いや…それも遠慮しとく」



穂風は楽しそうにケラケラ笑ってる。



ったく…。人の気も知らないで…。
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