薬師見習いの恋
 マリーベルはルーの枝を捧げられた動物の骨を見つけた。
 いつか彼女が見つけ、祈りとともにルーの枝を捧げたものだった。

「なぜこんなにしつこいんだ」
 フロランが吐き捨てる。

「なわばりを侵したからでしょうか。月露草を食べていましたから、食料を横取りに来たと思われたのかもしれません」
「あとは帰るだけだというのにイノシシふぜいが」
 毒づきながら、フロランは右腕を押さえて呻く。

「くそ、さっきの衝撃で肩がはずれた」
 つぶやくフロランを見てマリーベルは息を呑んだ。
 フロランの右肩のあたりが変形していて、腕はぶらぶらしている。

「すみません、脱臼は私には治せません」
「安心しろ、こんなものはすぐに治る。村には軍医がいるからな」
 フロランはロニーににやりと笑って見せるが、その額には脂汗が浮かんでいる。激しい痛みをこらえているのだろう。

「だけどこのまま帰ると魔獣を村に連れて帰ることになっちゃう。どうにかしないと」
 マリーベルは息を切らしながら言う。

「いや、そのほうがいい。村には兵士がいる。彼らに退治してもらおう」
「兵の人だって無傷ではすまないわよね?」

「兵士は戦うために存在しているんだ」
「私も反対です。村の近くで戦うなら、逃がしたときに村民が危険です」
 ロニーが言う。
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