薬師見習いの恋
「だったらどうするって言うんだ」
「あの魔獣をどこかへ追いやるか、退治するか……」
「退治は無理だろう。追い払う方が現実的だ」
 どたどたと大きな足音が聞こえ、ロニーとフロランは言葉を切った。

 魔獣はふがふがと鼻息も荒く、憎き敵を……マリーベルたちを探しているようだった。
 そうしてぐるぐると歩き回り、とうとうマリーベルたちを見つけ、その目に憎悪をたぎらせる。

「見つかった!」
 逃げようとするマリーベルの服をロニーが掴む。

「待って、様子がおかしいです」
「近寄って来ないな」
 フロランが言う。

「どうして? ここまで追って来たのに」
 ロニーはルーを見る。

「もしかしてルーが嫌いなのかもしれないですね」
「ルーが?」
「ミントは効果がなかったようですが、先ほど投げたポマンダーはすごく嫌がっていました。ポマンダーによく使われるのはミントにセージ、ヤロウ、ローズマリー、そしてルー」
「ルーが嫌いなら、これを使ってどうにかできないかしら。枝を刺すとか」

「かなり近づかなくてはなりませんから危険です」
 ロニーが答える。
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