薬師見習いの恋
 持っているナイフで節を削り、その端に弦をはさむための窪みを(くさび)形につけた。
 次いで、木に巻き付いた蔦を切り、その葉をむしり取り、樹皮をはいで紐状にする。

「こんなときに弓の授業が役に立つとはね」
 イチイの枝を切ったロニーは苦い笑みを浮かべて剣で節を削り、弦をかけるために端を削り、逆側に弦を結ぶための窪みをつける。
 マリーベルが蔦で作った弦の先端を輪にして削った先端にとりつけ、枝をしならせて窪みをつけた部分にくくりつける。

 ロニーが弓を作る間、マリーはじっとしていられず、くくり罠に使われていた縄を手にとった。
 古いが、まだ使えそうだ。罠として使っていたときのまま、片方はイチイに結ばれている。
 確認してから作業をした。

「マリーはなにを?」
 ロニーがマリーベルのしていることに気づいて尋ねる。

「古い罠を再利用して罠を作ったの。少しでもあいつを足止めできるなら、と思って」
 くくり罠のトリガーとなる部分を踏み抜くと足が縄に縛られた状態になり、身動きが取れなくなるのだ。直接的に命を奪うものではない。

「そうですか、私がかからないようにしなくてはね」
 冗談めかしてロニーが言い、マリーベルは目だけで笑みを返した。

「できました」
 弓が完成すると、ロニーは弦をはじいて確認した。強度は充分にあるように思われる。

「矢を貸して」
 ルーの枝の矢を受け取って腰のベルトに差すと、ロニーはルーの木陰から移動して魔獣に狙いをつけて引き絞る。
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