薬師見習いの恋
「横暴だ!」
「王女だからって!」
 ルタンとサミエルが叫ぶ。

「薬草を独占する気か!」
「ふざけるな!」
「私腹を肥やす気だろう!」
 村民の中からも叫びが上がる。

 どこからともなく石が飛んできて、モリスがさっと王女の前に出て盾となる。
 フロランはいつでも剣を抜けるように柄に手をかけて構え、村民の前に出た。
 村民が思わずたじろぎ、前にいた人たちが一歩を下がり、後ろの人とぶつかる。

「やめろフロラン」
「しかし」
「下がれ」
 エルベラータの命令で、フロランは一歩を下がる。が、柄に手を掛けたままだ。

「ぼ、暴力で脅すのか!」
「結局、王族はそうやって民衆から搾取するんだな!」
 ルタンとサミエルが叫び、そうだそうだ、と群衆から声が上がる。

「違います!」
 マリーベルは思わず叫んでいた。

「エルバ様はみんなを思ってそうしたのよ!」
「マリー! そいつの味方をするのか!」

「味方とかそういうんじゃないの!」
 わかってもらえないのがじれったい。エルベラータと一緒に過ごせばそんなことを考える人じゃないことはすぐわかるのだろうに。
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