薬師見習いの恋
「ロニーもそいつの味方か!」
「所詮はよそものだな!」

「違うわ、ロニーはあんなにみんなのために頑張ってくれたじゃない!」

「出ていけ!」
「裏切者は出ていけ!」
 村民の叫びに、マリーベルはさらに青ざめる。

「興奮状態だ、今はなにを言っても届かないよ」
 ロニーの声は暗い。

「そんな……」
 自分もロニーも、あの疫病のときには寝る間も惜しんで尽力した。
 命懸けで薬草を採ってきた。
 なのにこんなふうに言われるなんて。

「待ってよ!」
 村人の中から叫び声がした。

 タニアだった。
 タニアはポーチに走り寄ってきて、村長の前に立つ。

「マリーもロニーもあんなに頑張ってくれたのよ!? どうして裏切り者なんて言えるの?」
「王女と一緒になって森への立ち入りを禁止しているじゃないか。自分たちだけが薬草を手に入れて」

「全部この村のために使ってたじゃない」
「それは……薬師なら当然だろ!」

「当然のことではない!」
 アシュトンが口をはさみ、人々の目が彼に向いた。
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