薬師見習いの恋
 それがあればきっとロニーはここにいてくれる。
 そう思うのだが、どれだけ探しても見つからない。

 最初、ロニーが銀蓮草を探していると言ったとき、なにかのついでに村人も一緒に探してくれていた。だがいつまでも見つからない薬草に、いつしか探すのをやめていた。

 マリーベルはやつあたりのようにたんぽぽを引っこ抜く。胃にいいし、解熱の効果、母乳の催乳効果もある。
 たんぽぽなんて今日でなくても採れるのに。
 ため息をついてかごに放り込む。

「けっこう採れたかな」
 皮手袋を脱いで額の汗を拭い、マリーベルは呟く。

「銀蓮草は今日も見つけられないけど……」
 ガサッと音がして、マリーベルははっとそちらを見る。

 狼や熊、魔獣なら、早く逃げなくてはならない。

 茂みから現れたのが人間だったのでホッとしたが、見慣れない三人だったので訝しく思った。三人ともが旅の軽装だが上質なのは見て取れた。そのうちのひとりはどう見ても女性――それもとびきりの美女なのに男装をしている。

 波打つ金髪は木漏れ日に煌めき、青い瞳は空よりも泉よりも濃い。細身だが胸は大きく、男性の服を着ているせいか凛々しかった。
腰にはボール型をした金色のポマンダーがついていた。透かし模様の中心には家紋らしき紋章が刻まれ、中心には青い宝石が象嵌されていた。

 かすかに香るミントはポマンダーから漂っているのだろう。ミントは魔獣除けの効果があると言われているから、旅の間に魔獣を避けるためだと思われた。
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