薬師見習いの恋
 そうして耐えられなくなって、しばらくしたら彼女に謝る。
 彼女はすぐに笑って『いいよ』と許してくれた。
 そんな彼女にアシュトンはひかれる一方だった。

 成長し、男の子だけで遊ぶようになっても目はマリーベルを追った。
 レミュールに戻って会えない日々はもどかしく、夏の休暇が待ち遠しかった。

 会うたびにマリーベルは美しくなっていった。
 レミュールにいる同級生の女の子たちは日焼けを気にして肌が白く、不健康に見えた。なのにおしろいをぬってさらに白くして香水をふりまき、ごてごてした衣装を着て、アシュトンにはそれが醜悪に見えて仕方がない。

 マリーベルは化粧けがなく、質素な服を着ていても輝いて見えた。それは生命力だとか活力だとか言うのかしれない。

 気を引きたくて贈り物を贈ったが、彼女はまったくわかっていないようだった。

 今後はもういらない、と断られたときには好意を拒絶されたようで絶望したが、食べ物のほうがいいな、とおずおずと言われたときには胸がきゅんとした。食いしん坊な彼女がかわいらしく思えた。だからそれ以来はレミュールで流行っている高級なお菓子をお土産にした。村の男たちとは違う価値のある男なんだ、と思われたかった。

 自分がただの友達としてしか見られていないのは残念だったが、それは村の同年代の男性に対しても同じだったから、ほっとしていた。

 それが変わったのはロニーが来てからだ。
 レミュールでもなかなか見ないような美しい青年。
 彼が一時的にマリーベルと一緒に暮らしていたと知ったときは嫉妬で気が狂いそうだった。
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