The previous night of the world revolution
薬を飲んでから。

残った料理は全部アリューシャに食べさせるとして。

「ルシファー、ちょっと外にでも出てみないか?」

今日はかなり体調が良い日だと判断し、俺はそう誘ってみた。

「…」

ルシファーは無表情のまま、俺をじっと見つめ返した。

彼はあまり、外に出るのが好きではない。

帝国騎士団にいた頃は、むしろアウトドア派だったはずなのだが。

今では、外に出ることを厭うようになってしまった。

本人曰く、外に出るのは恥ずかしいそうだ。

生き恥を晒す、という意味で。

自分はもう陽の当たるところでは生きられない、と。

確かに彼は、世間では女王を殺しかけた大罪人である。とはいえ、彼はまだ未成年の為、顔は出されていないから、人目についても彼が事件の犯人であるとばれる心配はないのだが。

それでも、人に見られている気になってしまうのだろう。

「庭に出るだけだから。ちょっとだけ出てみよう。ずっと病室の中じゃ気が滅入るだろ?」

「…」

病院の周辺には、広い庭園がある。

そこには色とりどりの花が咲き乱れ、中央には何パターンにも形を変える噴水があった。

入院患者をリラックスさせる為に作られた庭園だ。

ずっと室内にいるよりは、少しでも外に出て、日光に当たった方が良い。

俺はそう思って、彼を誘った。

ルシファーはあまり行きたくはなさそうだった。

「病院の庭園なんだから、会う人なんてそんなにいないよ」

いたとしても他の入院患者か、その付添人くらい。あるいは病院のスタッフだけだ。

多くの人間が、彼を取り囲むように指差している訳じゃない。

俺はそう思うのだが、彼にとってはそうではないのだ。

外気に触れるだけで、見知らぬ人に取り囲まれて、指差されてじろじろ見られて。笑われているように感じてしまうのだ。

「な、少しだけ。今日は天気も良いから、外に出ないと勿体ないぞ」

「…」

宥めるようにそう誘うと、ルシファーは小さくこくりと頷いた。

よし。交渉成立。

「じゃあ行こう。アリューシャ、残り物の片付け宜しく」

「おー。そろそろ腹が一杯なんだけど」

「残したら次作ってやらんからな。頑張れ」

「ルル公が鬼!」

ルシファーの食べ残しでも平気でばくばく食ってるアリューシャを横目に、俺は車椅子を用意して、ルシファーをひょいと抱き上げた。

あ、軽い。今日頑張って食べた分くらいは太れよ。

ルシファーは半年近くほとんど歩いていないから、車椅子に乗らないと移動が出来ない。

そもそも、自分で歩いて何かしようにも、それだけの労力は彼にはないだろう。

俺は何とも思わないが、彼にとってはそういう自分の無力さが、鬱を悪化させる要因なのだろう。
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