うみに溺れる。


雫玖が言うように俺はずるいのかもしれない。

無意識に探していた雫玖の姿は、今では無意識に海の事を見ている。
あれだけ“雫玖、雫玖”と言っていたのに、海が手に入ればすぐにそれを手放した。


《僕の醜い嫉妬に付き合わせてしまってごめんね。》


手紙の節々には落ちた涙の後があった。

本音はどうだった、なんてもう考えたくない。


「空人、次で降りるよ」

「…あぁ、」


それでも、プラトニックな俺らの関係のどこかには絶対的に雫玖が存在している。

雫玖が好きだった海の代わりに、誰かの家の屋根が見えるアパートに俺達は住む。


「こっから海までどんくらいかかんだろうな」

「さぁ?ねぇ、それよりこの荷物持って重すぎ」






─────『……海ね、海もね、空人の事が好きだよ』






「は、何笑ってんの?」

「いや?持ってやるからほら、」



END


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