Rescue Me
 帰りの車の中、薫のくれたアドバイスを何度も思い返した。

 今度こそ彼に思っている事を伝えたい。もし例えそれがどうしようもない事でも、とにかく彼に自分の気持ちを知ってほしい……。

 先ほどから沈黙の桐生さんをちらりと見た。帰り道も車の中で彼は一言も話さず、無表情で何を考えているのかさっぱり分からない。ただどう見てもあまり機嫌が良いと言う感じでもなく、何となく今話し合いをするタイミングでもない感じがする。

 部屋の壁に掛けてある時計を見た。そろそろ夕食の時間になっている。

 今日は朝から忙しく子猫の世話でろくに睡眠を取っていないのもあるが、ゆっくりとご飯を食べる時間もなかった。睡眠はどうしようもないとして、やはり話し合いをする時は少なくともお腹がいっぱいの時がいい。人間お腹が空いているとどうしてもカリカリしてしまう。

 冷蔵庫を開けて中を見た。週末は買い出しをする日だが、今日は朝から忙しくて何も買っていない。

 冷蔵庫を閉めると、とりあえず買い物に行こうともう一度バッグを肩にかけた。

 「あの、私ちょっと出かけてきますね」

 そう言って玄関に向かおうとすると、彼はいきなり私の行く手を遮った。

 「どこに行くんだ……?」

 「えっ……?あの、今からお買い物に行こうかと……。わわっ……!ちょっと桐生さん何して……」

 彼はいきなり私を肩に担ぎ上げると寝室に向かって歩き出した。

 「悪いな、蒼。申し訳ないが名古屋には行かせられない」

 「名古屋!?」

 ── 名古屋って一体なんの話!?
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