Rescue Me
 「久我といい、この薫って奴といい、何故蒼が俺のだと分からないんだ?」

 「薫!?」

 「他の男がどんなに割り込んできても、譲れないし、もう手放す事は出来ない。……こんな男に捕まって運が悪かったと諦めてくれ」

 そう言いながら桐生さんは寝室のドアを開けた。私は必死に考えを巡らせた。そう言えば薫が私の兄に会いに一緒に名古屋に行こうと誘っていたのを思い出した。

 「ちがっ……待って桐生さん、違うの!薫はね ──…」

 彼は私をベッドにボスッと落とすと、魂の奥まで射抜くように見つめた。

 「違う……名前で呼んで」

 「えっ……?名前……!?」

 「苗字じゃなくて名前で呼んで」

 彼は先日酔って帰ってきた時と同じ怖いくらいの情欲を目に湛えながら、私を見下ろしている。思わずゴクリと固唾をのんだ。

 あの夜彼に抱かれた記憶が一気に蘇ってくる。もしこのまま流されて彼に抱かれたら……酔っていない彼に抱かれたら、どのように抱かれるのだろうか……と一瞬不埒な考えが頭に過ぎるものの、今はそんな事をしている場合ではない。

 彼が私の服のボタンを次々と外していく中、私は必死にボタンをとめ直した。

 「待って!桐生さん……じゃなかった……颯人さん!落ち着いて……!」

 私は必死に彼に話しかけた。

 「颯人さん、違うの!あのね、薫はね……私に興味があるんじゃなくて、颯人さんに興味があったの!!」

 一体何が悲しくてこんな事を言わないといけないのかと心の中で嘆きながら、私は必死に叫んだ。

 しーんと沈黙が15秒から20秒くらい私達の間に流れる。

 いきなり桐生さんは私の手を離すと、自分の行動に嫌気がさしたように苦しげに目を固く閉じた。そして私から逃げるようにベッドから降りた。

 そんな彼をすかさず掴むと抱きついた。すると突然抱きつかれた桐生さんはバランスを崩し、それと共に私もベッドから落ちて彼と一緒に床に転がった。それでも必死に彼に抱きついたまま自分の思っている事を伝えた。

 「お願い!颯人さんに聞いて欲しい事があるの!」

 私はそう言いながら思いの丈を全てぶちまけた。
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