Rescue Me
 彼女の考えている事は大体分かる。

 莉華子さんは桐生グループの重役の奥様方の間で、色々と悪い噂をされているらしい。

 彼女の美しい容貌から実は他に愛人がいて一緒に暮らす為に会長を置いて家を出たとか、ただ単に金が欲しくて結婚しただけで、金だけ貰ってあとは一人で高級マンションで優雅に暮らしているとか、他にもひどい噂が多々ある。勿論、そんな話しはありもしないたちの悪い噂だ。おそらく面白半分で大袈裟に話を歪曲して誰かが噂を広めているに違いない。

 莉華子さんは自分で小さなインテリアデザインの会社を経営していてマンションだって自分で全て払っている。

 彼女が家を出た理由も颯人さんから色々と聞いている。ただなぜ颯人さんのお父さんと離婚しないのかはわからない。

 もしかすると体裁を気にするお義父さんが断ったのかもしれないし、莉華子さんが颯人さんや海斗さんの為に離婚しないのかもしれない。きっと彼女なりの考えや事情があるのだろう。

 それに比べ、百合子さんは一昔前の典型的な日本人妻のかがみの様な女性だ。

 基本的に男は仕事、女は家庭を守るべきという考えの人で、妻は子供を産み立派に育て、家事も完璧にこなし、夫が少しくらい外で浮気しようが目をつむり、我慢して夫を立てて支えるという立派な人だ。

 莉華子さんの様に独立して仕事をして一人で暮らしたり、私の様にグループ会社の御曹司を金の為に陥れたというような噂のある女は彼女の常識からすると信じられないのだろう。

 柚木夫妻が私と莉華子さんを不躾にジロジロと見ているのを颯人さんはじっと黙って見ている。

 以前会った時はきちんと起立して挨拶したのに、今日は席から立ちもせず相変わらず私の椅子の背に手を置いたまま。私を守る様にその場に座っている。

 「まぁ!奥様のご家族がご一緒なんですね。初めまして。わたくし、柚木拓海(ゆずきたくみ)の妻、百合子と申します」

 彼女は私の両親と兄に挨拶をした。慌てて私の家族は席から立ち上がると、柚木夫妻に挨拶した。そして現在夏休みで莉華子さんと一緒にここサンフランシスコを訪ねている事、そして明日日本へ帰る話をした。

 「……まぁ、そうなんですね。サンフランシスコを満喫された様でよかったですわ。でも次にいらっしゃる時は可愛いお孫さんに会いにくる時かしら。……お子さんのご予定は?」

 百合子さんはにこりと微笑みながら私に尋ねた。

 実際に嫌味で言っているのか、ただ単純に世間話として言っているのか分からない。ただそれを聞いた私の家族と莉華子さんは一気に青ざめた。

 皆、私が必死に妊活をしているのを知っていて、私の前で子供の話は暗黙の了解で禁句になっている。
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