Rescue Me
 「っ……まっ…まぁ……!」

 やっと言葉が出るようになった百合子さんはそう一言だけ叫んだ。

 颯人さんから顔をあげて彼女を見ると、真っ赤な顔でまるで獣でも見るような目つきで颯人さんを見ている。

 彼女は私に視線を移すと、先ほどとは打って変わって今度は憐れみの目で私を見た。

 「あの、ご家族でお食事の所、お邪魔しました。ではごゆっくり!」

 そう言って百合子夫人は莉華子さんにも同じ様に憐れみの目を向けると、先ほどから顔を真っ赤にして話を聞いていた柚木社長を引きずりながら、颯人さんから逃げるように去って行った。

 もしかすると彼女の頭の中で、颯人さんのお父さんにも同じ趣味があるのでは……と思ったのだろうか……?

 そんな事を考えながら彼らが去って行くのを呆然と見ていると、颯人さんが突然嬉しそうな声をあげた。

 「おっ、俺たちの食事が来たぞ」

 見るとウェイターが大きなカートに私達の食事を乗せながらやって来た。

 「よかった。腹減ってたんだ」

 颯人さんは皆がまだ呆然と私達を見ている中、嬉しそうにナイフとフォークを手に取った。




 ◇◇◇◇◇◇




 次の日の朝、私と颯人さんは家族を見送りにサンフランシスコ国際空港までやって来た。

 「いろいろ有難う。今回も本当に楽しかったわ。蒼も元気でね。体には気をつけて無理をしないでね」

 「うん。お母さん達も元気で。気をつけて帰ってね」

 「颯人さんと仲良くな。日本に帰って来ることがあれば少し遠いが宮崎まで遊びにおいで」

 私は両親に国際線出発口で別れを告げた。ほんの短い間だったが、とても楽しい時間を過ごせて良かったと思う。これでまたしばらく両親と会えなくなるのかと思うと少し寂しい。

 「蒼、俺また多分11月辺りこっちに来るけど、なんか日本からいる物あるか?例えば、ボンデ──…」

 「スキンケアと化粧品以外何もいらないから!」

 翠がクククッと笑いながら私に何か言おうとしているのを、思わず睨みながら遮った。

 私は最後に莉華子さんに別れの挨拶をした。

 「あの、是非またいらしてください。私も颯人さんもいつでもお待ちしています」

 すると彼女は私の両親と別れの挨拶をしている颯人さんをちらりと見ながら言った。

 「私ね、本当は心配だったの。颯人は結婚したらどうなるのかなって。私と翔平は海斗にとっても颯人にとっても、あまり良い親だと言えなかったから……。でも今の颯人を見てとても安心したわ。蒼さん、颯人を幸せにしてくれてありがとう」

 莉華子さんはそう言うと手を振って私の家族と共に国際線出発口へと姿を消した。
< 219 / 224 >

この作品をシェア

pagetop