女嫌いな年下のおとこのこ
「最寄駅…近かったんだね」
「みたいですね」
更に家の最寄駅が一駅差というのも驚きだ。
「あの、さっきはすみませんでした」
電車に揺られながらぼーっとしていると、唐突にそう謝られた。
「ん?何が?」
「弁当の件、課長の前で笑ったのは不味かったなって思って」
「ああ…良いよ。酔ってたんでしょ?」
「はい。でも少し覚めてきました」
改めてすみませんと頭を下げられ、そこまでされると逆に少し申し訳なくなる。
大丈夫だからと両手の掌を前に差し出し、安心させようと笑顔を見せる。
「それにしても酔ってるの全然分からなかったよ。顔に全く出ないんだね」
「そうですね。これでも弱い方なんですけど」
顔に出ないから割と呑まされるんです、と飛鳥は苦笑いしてそれから思い出したように言葉を続けた。
「同居人の方は許してくれましたか?」
「ん〜たぶんまだ怒ってるかな。匙投げられちゃったけど」
「白河さんでも人を怒らすことあるんですね」
「その子の地雷は踏んでばかりだよ」
あの日以来嫌がらせの弁当を持たせてくる事はないし、会話も至って普通。
昔の瑞希なら自分の気が済むまで文句を言い続けていたが、知らぬ間に大人になっているのだと少し寂しさも感じだ。
瑞希との同居もあと1週間。
これが終わってしまえばまた会う事もなくなり、瑞希のいない日常に戻る。
「……」