女嫌いな年下のおとこのこ
まもなくして瑞希も戻ってきたが、特に変わった様子はない。
機嫌を損ねた理由を聞いても素直に話す性格でない事は知っているのでスルーした方がいいかと思っていると、予想外に話しかけてきたのは瑞希の方だった。
「トラブルって事は、明日は遅いんか」
「え、あー…どうだろう。分からないから夕食は済ませておいてもらえる?」
「…分かった」
「ねえ、瑞希くん」
話は終わりとばかりに早々に背中を向けた瑞希を聖は慌てて呼び止めた。
「なんだよ」
「その…ごめんね。結局私、あんまり役に立てなかったよね」
瑞希が振り返り、色素の薄いヘーゼルアイと目が合う。
嫉妬したくなるほど長いまつ毛と切れ長の瞳は何を考えているか分からないが、そこに怒りの感情が無い事は分かった。
「…そう思うんなら、土曜は死ぬ気で休みぶん取れ」
「土曜日?」
「メシにいく。お前と俺で」
突然の食事のお誘いに咄嗟に言葉が出てこなかった。
「キャンセルは受け付けねえ。仕事にでも行ってみろ、お前の大事なパソコンのデータ…ウイルスぶち込んで全部抹消してやるからな」
IT関連の仕事をしている瑞希なら本気でやりかねないと血の気が引き、聖は青い顔でコクコクと頷く。
瑞希はくるりと踵を返すと、まっすぐソファーまで歩いていった。
聖は聖で明日中になんとか事を納めなければとプレッシャーに感じつつも、瑞希との食事に行ける事を密かに楽しみにしていた。