【電子書籍化決定】改題/犬猿の仲の狼王子から、なぜか求愛されています!?(旧題/関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている)
 今は、赤面を彼女から隠すのでせいいっぱいだ。

 昔はどうにかなった。だが、大人になり、さらに魅力的になったシェスティを前にしたら、こらえがきかない。

 できるのはせいぜい眉を寄せ、顔を顰めることくらい。

「……それではいけないのは、俺も分かってる」

 でもシェスティ相手にだけは、どう素直になっていいのか分からない。

 出会った時の子供染みた失礼な発言が、今も彼を引き続きこじらせていた。

          ◇◇◇

 王子の訪問の準備というのは気も遣うし、結構大変だ。

 屋敷の警備体制を普段以上に強化する。それから、カディオが連れてくる護衛たちの場所も前もって確保して――。

「シェスティがいてくれて助かるなぁ」

 本日は比較的ゆっくり王宮には行くようだ。母と兄が出掛けた午前中、一人でのほほんと眺めている父に、シェスティは殺意が湧いた。

「苦手な虫でも吹っ掛けてやろうかしら……」
「お嬢様。お嬢様お願いです、大人になって」

 大人びたと褒めていた一人である御者のマーレイが、後ろからシェスティを『どうどう』と落ち着けた。
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