【電子書籍化決定】改題/犬猿の仲の狼王子から、なぜか求愛されています!?(旧題/関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている)
 シェスティは、見ていただけだ。
 誰も彼女に花なんて贈ってくれなかった。そんなもの欲しがらなそうだと、学校゛誰かが話していたのを耳にしたこともある。

 花なんてなんの役にも立たない。
 でも、ほしくないなんて、言ったことはない。

 羨ましかった。あまりもらえないからこそもっと特別なものに思えたし、こっそり花屋に寄って自分で買った。

「嬉しい。ありがとう、カディオ」

 シェスティは花束を胸に優しく抱いた。

 カディオの顰め面が増す。彼の背中で、尻尾が勢いよくぶんぶんと動く。

「べ、別に。ほしいなら、また買ってくる」
「いいの?」

 パッと花束から彼のほうを見たシェスティは、けれど「あ」と声を萎ませる。

 目敏く気付いたみたいに、カディオが見てくる。

「なんだ」
「無理しなくていいわ」
「は?」
「だって、贈る相手は私なのよ? それでもいいの?」

 カディオが、あんぐりと口を開けた。

 彼のそんな表情を見たのは初めてだ。シェスティもびっくりして、目を丸くしてしまう。
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