ファンは恋をしないのです
7.声優は恋をするのです
* * *

「御堂ってさ、奥さんとどうやって付き合って、結婚まで至ることになったの?」
「…何の脈絡もねぇな、どうしたんだよ。」
「お相手一般人だったよなぁ、そういえばって。」
「なになに、恋話!?」
「そうそう!三澄は目下片思い中だからな!」

 三澄は割と声優友達の多いタイプである。今日は『スタカラ』ではなく、たまたまスタジオが被ったから集まった友人たちで、スタジオ近くの居酒屋に来ていた。御堂は数年前に一般人と結婚し、空野も最近結婚した。三澄のことを全力でからかおうとしている二階堂も含めての4人だ。

「片思い中なの?え、そんなピュアな感じの恋しちゃってんの?」
「…空野さぁ…二階堂派に入んないでくんない?」
「いやだってさ、こうやってみんなでご飯行くの久しぶりでそんな恋のビッグウェーブな話だったら誰だってこうなっちゃうって。な、御堂?」
「別に、他人が誰と恋愛しようが結婚しようが関係ねぇよ。つーか俺は家帰りてぇんだけど。」
「そうだよねそうだよね~唯ちゃんがいるもんねぇ。」
「唯ちゃん?」
「…てめぇ。」

 御堂が空野を睨んだ。しかし、家に帰りたいのは『唯さん』に会いたいからだとすれば納得がいく。もし仮にこの前のように里依が家にいてくれたら、自分だって迷うことなくすぐに帰る。

「その、唯さん?は、御堂のファンだった人?それとも全然関係のない人?」
「…何、それ聞いてどうすんの。」
「…うーん…。聞きたいだけかも。」
「は?」

 三澄は素直に白状した。聞いてどうすると言われれば、参考にできる状況ならするがとしか言えない。

「唯ちゃんは御堂の生粋のファン。ファンレターとかもばっちり書いてくれるタイプのファン。」
「なんでお前が答えるんだよ!」
「だって御堂、絶対口割らないでしょー?それで?片思い相手はどんな子なの?」

 空野の目は好奇心で満ちていた。はぁーとため息をつきながら、テーブルに突っ伏した三澄は口を開いた。

「…『スタカラ』のファンの子。でも俺は最推しってわけじゃない。ただ、ライブの俺を…見つけてくれた人。」

 言葉にすると御堂の状況とかなり違って、三澄はより一層深くため息をついた。
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