ファンは恋をしないのです
3.本人に会う=イベント
一か月後の金曜日。里依と怜花はいつもの居酒屋に来ていた。
「結局さぁ。」
「うん。」
ビールジョッキを持ち上げながら、里依は相槌を打つ。
「会わないよねぇ…。」
「…会わないのが当たり前なんですけどね。」
「それはまぁそうなんだけど。でもさ、会ってもよくない?だってぜーったいここにいたわけじゃん?同じ日に。」
「…ぜーったい、ではなかった、ってことなんじゃない?」
「絶対里依のことだと思ったんだけどなぁ。」
里依と怜花の隣の6人席が空いた。向かい合って座る二人組の男性のうち、一人と目が合って、里依は思わずジョッキをゴトンと落としかけた。
「え…。あ、え…あ、嘘…。」
「どしたー?」
頭を抱えて、テーブルの方しか見ることができなくなった里依を見て、怜花も空いた側の方にゆっくりと視線を向けた。
「えっ…あー!」
「怜花!だめ!顔を上げちゃだめ!」
「だって、噂をすればじゃん!」
目をキラキラと輝かせて、里依の肩を揺さぶる怜花とは対照的に、里依はといえば下を向くばかりで、動けない。酔わない体質でも、居酒屋の楽しい空気のおかげでふわふわとした気持ちになっていたのに、一瞬で脳がクリアになる程度には冷え切った。
「三澄~!ついにバレちゃったな。」
「…すみません。席が空いたからつい、…気になって。」
怜花と同じく楽しそうな二階堂はひらひらと手を振っている。少し癖のある短めの黒髪がふわふわ揺れる。向かいに座る三澄は、ライブの時と同様の明るめの茶髪だった。二階堂の手を『やめろやめろ、困ってるだろ』と言いながら止めようとしてくれている。
「もし良ければ一緒に飲まない?」
「いいんですか?」
「ちょっと怜花!いいわけないじゃん!こちらは声優さん、私たち一般人!」
「いやいや、芸能人でもあるまいし。一般人だよ、俺たちも。ただ職業が声優ってだけ。」
「こんな機会ないよ、里依!」
「ねぇ、私の話聞いてる?」
「おねーさん、この4人席に移ってもいいですか?」
「今拭きますのでお待ちくださいね。」
店員が食器を片付け、テーブルを綺麗にしてくれたところで、もはや里依に逃げ場などなかった。そのまま横にスライドする形で座ると、里依の隣は三澄だ。当然ながら、顔が上げられない。
「結局さぁ。」
「うん。」
ビールジョッキを持ち上げながら、里依は相槌を打つ。
「会わないよねぇ…。」
「…会わないのが当たり前なんですけどね。」
「それはまぁそうなんだけど。でもさ、会ってもよくない?だってぜーったいここにいたわけじゃん?同じ日に。」
「…ぜーったい、ではなかった、ってことなんじゃない?」
「絶対里依のことだと思ったんだけどなぁ。」
里依と怜花の隣の6人席が空いた。向かい合って座る二人組の男性のうち、一人と目が合って、里依は思わずジョッキをゴトンと落としかけた。
「え…。あ、え…あ、嘘…。」
「どしたー?」
頭を抱えて、テーブルの方しか見ることができなくなった里依を見て、怜花も空いた側の方にゆっくりと視線を向けた。
「えっ…あー!」
「怜花!だめ!顔を上げちゃだめ!」
「だって、噂をすればじゃん!」
目をキラキラと輝かせて、里依の肩を揺さぶる怜花とは対照的に、里依はといえば下を向くばかりで、動けない。酔わない体質でも、居酒屋の楽しい空気のおかげでふわふわとした気持ちになっていたのに、一瞬で脳がクリアになる程度には冷え切った。
「三澄~!ついにバレちゃったな。」
「…すみません。席が空いたからつい、…気になって。」
怜花と同じく楽しそうな二階堂はひらひらと手を振っている。少し癖のある短めの黒髪がふわふわ揺れる。向かいに座る三澄は、ライブの時と同様の明るめの茶髪だった。二階堂の手を『やめろやめろ、困ってるだろ』と言いながら止めようとしてくれている。
「もし良ければ一緒に飲まない?」
「いいんですか?」
「ちょっと怜花!いいわけないじゃん!こちらは声優さん、私たち一般人!」
「いやいや、芸能人でもあるまいし。一般人だよ、俺たちも。ただ職業が声優ってだけ。」
「こんな機会ないよ、里依!」
「ねぇ、私の話聞いてる?」
「おねーさん、この4人席に移ってもいいですか?」
「今拭きますのでお待ちくださいね。」
店員が食器を片付け、テーブルを綺麗にしてくれたところで、もはや里依に逃げ場などなかった。そのまま横にスライドする形で座ると、里依の隣は三澄だ。当然ながら、顔が上げられない。