低温を綴じて、なおさないで
わたしが名前を呼ぶと、何をしていても必ず手を止めて、わたしをじっと見つめて「ん?」とそのあとの言葉を待ってくれる。
わたしにキューティクルを送るドライヤーが奏でる音。ナノイオンが私たちにアクリル板のような壁を作っているのだろうか。
聞こえていない、とわたしのぬかるんだ心の奥底が判断したのだろうか。次にこぼれた言葉は、わたしの唇と発音が用意していない、持ち合わせてもいないものだった。
────「すき」