低温を綴じて、なおさないで


中1、静かに揺れていた小さな波が、大きく周りを飲み込むような津波をもたらした感覚だった。



今までは、チョコレートをもらって「好き」と伝えられていた。中学に上がってからは、バレンタインデーとは関係のない時期に「好き」を受け取った。


そしてそのあとには「付き合ってください」という言葉が付随した。




……付き合う、つまり恋人。好意と好意がリボンのように結ばれて、特別を与え合う。


恋心の自覚はないながらも“特別”は栞だけだと思っていたから、恋人ができたら栞へ抱いているような感情が自然と湧いてくるものだと考えていた。




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