低温を綴じて、なおさないで
それが、大きな間違いだった。
好きを俺に与えた女の子が、彼女になった。好きになろうとしても、常に頭に栞が浮かぶ。好きという感情の延長にいてほしいのは、栞だった。
栞と話したい夜の時間に“彼女”から電話が来る。彼女という存在は、いくら経っても特別にはならなくて、栞を恋しく思う気持ちが濃くなっていくだけだった。
極め付き、栞にも俺と同様、彼氏ができた。俺以外の男の横で笑う栞を見ていられなかった。
俺は栞以外の女の子を特別にできないのに、栞は俺以外の男を特別にできるのだと考えたら、どうしようもなく嫉妬心と独占欲が込み上げてきた。
ずっと隣にいた幼なじみが離れていくのが嫌なだけかとも思った。どうだろう、そうなのかもしれない。好きとか好きじゃないとか、そんなものに答えはない。
ただ俺が、栞に言えること。
きみの人生を彩る理由に、俺がすこしでも入っていてほしい。