低温を綴じて、なおさないで
.恋衣
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𖦞
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12月、いよいよ秋は姿を消して、年末に向けて街が浮つき始めたころ。なんてことない道路脇の木々が、無数のライトでおめかししていて、夜は一段と華やかに輝く。
まだお昼過ぎのこの時間は、クリスマスへのそわそわした雰囲気は潜んでいて、マフラーが必須の冬ど真ん中にすぎない。
──わたしたち二人の特権を、はじめて音として伝えてから数日。
大体は今日とか明日とか直近ばかりだったから、いつもの直との約束が何日も先にあることは珍しくて、なんだか落ち着かなった。
今日がその当日、土曜。どうしても、直に自分の気持ちを伝える前に茉耶と話しておきたかった、なんて。どこまでもわたしは身勝手。
……だと思っていたけれど、そのタイミングで茉耶からの“新着メッセージ 1件”を受け取った。
『栞がもし時間をくれるなら話したい』なんてわたしが送ろうとしていた内容そのままで、なんとなく茉耶との縁は切れないのかなって思ったのもまた、わたしが身勝手だからかな。
大学近くのカフェへと向かう。店内は街同様クリスマス仕様の装飾とBGMが流れていた。洋風の隠れ家的なカフェの、窓際の席。薄いベージュのふわりと広がる艶やかな髪、見慣れた横顔が映って懐かしさすら覚えて涙が出そうになった。入口から茉耶のところまで、妙に長く感じた。