低温を綴じて、なおさないで



それから本当に2時間は帰してくれなくて、直との関係を1から10まで根掘り葉掘り聞かれてしまった。


口角が左右対称に綺麗に上がって、にこにことわたしの話を聞く茉耶に安心したし、やっぱりわたしもこんな風に素直で可愛い女の子になりたいなって思った。



おかげでわたしの気持ちの整理もできた。やっぱり誰にも渡したくない、わたしだけを見ていてほしい、わたしだけにやさしくしてほしい。



直が隣にいてくれる世界でしか生きたくない。




茉耶に事情聴取されている間、思い出したように教えてくれた。茉耶が、一度だけ、直のことを心の底からいいなって思って惹かれた瞬間があったんだって。


それが、たまたま大学内で直とわたしが話していたときだった、らしい。わたしを見つめる直の表情がやさしさと愛おしさに満ちていて、同じ表情を向けられたいな、って思ったって。



もちろん今、そんなふうに思ってないからね、と付け足されて、それに嘘はないとわかるし、周りからそう映っていたのが嬉しくなって、わたしも口角が緩んでしまった。





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