低温を綴じて、なおさないで



さっきまでの涙はどこへやら。いや、むしろ涙を流していたからこそ潤った瞳がいつも以上にきらきらして、わたしは茉耶からの言及を避けられないことを悟る。茉耶は元々、こういう話が大好きな女の子だった。



直とのこと、茉耶にはもちろんあまり人に話すことはなかったからどう言えばいいのかわからないしたじろいでしまうけれど、変わらない事実と想いがあるのは確かで。




「……直は、小さいころからずっと、すきなひと」


「きゃ!!栞の恋バナなんてほぼほぼ聞いたことなかったから、今日は帰さないよ!」




あかるくてかわいくて、弾けるような笑顔が周りを惹きつける魅力たっぷりなわたしの親友。そんな素直で純粋な茉耶を、たぶん葉月くんは傷つけた。


許せない、許せないけれど、茉耶が前を向いているならそれでいい。わたしの話を笑って幸せそうに聞いてくれるなら、それでいいかな。



いつかわたしたち以外から天罰が下るってそう信じてる。わたしたち二人をたぶらかした罪は重いから、きっとね。



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