低温を綴じて、なおさないで
「そんなやさしい直くんと、まさか必修外の講義で出会えたなんて、私には運命としか思えないんだけど、栞はどう思う?」
どう思う、って。茉耶と直の出会いが、たとえ神さまが決めた運命だったとしても、それが運命でなければいい、と思う。
生まれた時からお隣さんで、20年間、春夏秋冬をいっしょに経験しているわたしが運命じゃないなら、ほかに運命なんてありっこない。
茉耶と直の偶然が運命になりうるならば、神さまはわたしにだけいじわるだ。
「あると思うよ、運命」